【一般用】雅楽鑑賞の手引き

日本の古典芸能雅楽鑑賞の手引き

日本の古い都、奈良へようこそ。
本日は、日本の伝統文化にふれあうひとときをともにし、会議の疲れを癒すゆったりとした時間をお過ごしください。1400年の伝統を持つ古典芸能である雅楽は、きっと皆様の目と耳を楽しませ、心を大らかにリフレッシュしてくれることでしょう。このご案内文は、雅楽とはどのようなものかを簡単に解説し、観賞をより興味あるものにする手助けをいたします。

蘭陵王
蘭陵王

雅楽とは

雅楽は宇宙に響きわたるような大らかな曲と舞を楽しむ日本の伝統芸能です。
雅楽には次の三つの種類があります。

  1. 管弦「かんげん」は管楽器と弦楽器の演奏曲です。
  2. 歌謡「かよう」は雅楽風のコーラス曲です。
  3. 舞楽「ぶがく」は舞をともなう雅楽曲です。

本日は華やかな舞をともなう舞楽を2曲ご覧いただきます。

また舞楽にはその由来から3つの分類があります。

  1. 国風歌舞「くにぶりうたまい」は神楽などが起源の日本の国産雅楽です。
  2. 国から日本に渡来した舞楽は主に次のものがあります。他にもインドやベトナムから伝わったものもあります。
    唐楽「とうがく」は中国から伝わって来た舞楽で、左舞が中心です。
    高麗楽「こまがく」は朝鮮半島から伝わって来た舞楽で、右舞が中心です。
  3. 歌物「うたもの」は朗詠[ろうえい]、催馬楽[さいばら]など日本の貴族の間で興った舞曲です。
    本日の舞楽はすべて古い時代に中国から伝わって来て日本で完成された舞楽唐楽「とうがく」の左舞です。

本日の楽器

曲の前に本日の楽器を紹介いたします。
本日は「三管三鼓」の楽器編成で演奏します。
三管とは笙、篳篥および龍笛の三種の管楽器を、三鼓とは鞨鼓、太鼓、そして鉦鼓の三種の打楽器をいいます。

まず吹奏楽器(吹きもの)三管の紹介です。

笙(しょう)

パイプオルガンの原型ともいえる複管のリード楽器です。吹奏楽器でありながら和音が出せるのが大きな特徴です。吹いても吸っても同じ音がでるのはハーモニカと同じです。演奏時は伴奏楽器としての役割を担います。

笙(しょう)
笙(しょう)

篳篥(ひちりき)

オーボエ、ファゴットなどの原型ともいえるリード楽器です。葦を鏝(こて)でつぶした独特のリードを使用します。演奏時には主旋律を担当します。音程がとても不安定であるため高い演奏技術が必要です。

篳篥(ひちりき)
篳篥(ひちりき)

龍笛(りゅうてき)

フルートの原型で、運指がほとんど同じです。雅楽の曲は、まず龍笛のソロ演奏から始まります。主に広い音域を生かして主旋律に絡む副旋律を担いますが、主旋律を受け持つこともあります。

龍笛(りゅうてき)
龍笛(りゅうてき)

次に打楽器 (打ちもの)三鼓を紹介します。

鞨鼓(かっこ)

両面鼓の楽器で、革が張ってあり、2本の木の桴(ばち)で演奏します。演奏時には統率楽器として演奏全体のテンポを管理する役割をもちます。

鞨鼓(かっこ)
鞨鼓(かっこ)

楽太鼓(がくだいこ)

釣太鼓とも呼ばれ、バスドラムと同じ様に低く響く音でリズムをつくり、演奏全体を下から支えます。鼓面は直径50cmを超える大きさです。

楽太鼓(がくだいこ)
楽太鼓(がくだいこ)

鉦鼓(しょうこ)

雅楽では唯一の金属製楽器です。青銅製の皿を桴で擦るように叩きますので、硬い音が出ます。

鉦鼓(しょうこ)
鉦鼓(しょうこ)

本日の舞楽

蘭陵王(らんりょうおう):「さまい(左舞)」です。
北斎(五四九~五七七)に実在した王「高長恭」は、大変端正な顔立ちで顔の美しさが災いし、戦場での兵士の士気がなかなか上がらなかった。そこで一計を案じ、龍の乗った恐ろしい仮面をつけて指揮をとった所、連戦に連勝を重ねるようになった。これを喜んだ部下たちが作ったのがこの曲とされています。舞楽一人舞の名作中の名作とされ、春日大社、伊勢神宮、厳島神社他、さまざまなところでご奉納として神仏に奏される、大変おめでたい曲です。