【体験学習用】雅楽鑑賞の手引き

日本の古典芸能 雅楽 鑑賞の手引き

修学旅行生の皆様ようこそ。
日本の古い都奈良で1400年以上昔から伝わる古典芸能の雅楽を鑑賞し、いつまでも忘れられないよい思い出をつくってください。この手引きで多少なりとも雅楽観賞に興味をもっていただければうれしいです。

ところで皆さんは、日頃次のようなことばを使ったことがありませんか?

「調子(ちょうし)いい」、「音頭(おんど)をとる」、「打ち合わせ」、「二の舞(にのまい)」、「呂律(ろれつ)が回らない」、「野暮(やぼ)なことをいう」、「二の句が継げない」、「楽屋うら」、「やたらに」・・・

これらの言葉はすべて、雅楽から出た言葉なのですよ。昔の日本の人はそれだけ、お祭りなどの晴れの日に、神社等で演奏される雅楽に接することが多かったので、自然と使うようになった言葉ではないでしょうか。

蘭陵王
本日の演目  蘭陵王

蘭陵王別様装束(らんりょうおうべつようしょうぞく)

※別様(べつよう)装束(しょうぞく)」とは、その演目専用の衣装です。

蘭陵王別様装束

蘭陵王(らんりょうおう)って?

舞楽の中でも最も親しまれている演目の一つです。赤い装束に身を包んだ舞人が、龍を頭にのせた恐い顔のお面をかぶった蘭陵王となって勇ましく踊ります。この王さまは昔の中国に本当にいた人で、女性にもてもての水もしたたるいい男だったようです。普段はそれでよくても、戦争になると敵からも味方から強そうに見えないのでなめられてしまいます。そこでいちばん強そうに見える面をつけ、先頭に立って戦ってみごとに戦争に勝ちました。兵隊たちは喜んで蘭陵王の戦いのようすを舞にしたと伝えられています。「みんな我に続けー!」と王さまの自信に満ちた指揮ぶりが伝わってくるような踊りです。

雅楽の知識をちょっぴり

雅楽はおよそ1400年前から伝わるミュージカルに似た、曲と舞を楽しむ日本の伝統芸能です。古代の宇宙空間から高らかと響きわたってくるような、大らかでニュアンスに富んだ曲は現代人が聞いても新鮮です。
雅楽には三つの種類があります。

  1. 管楽器と弦楽器の演奏だけの「管弦(かんげん)」
  2. 雅楽風のコーラスの「歌謡(かよう)」
  3. 舞と曲をともなう雅楽「舞楽(ぶがく)」

この三つです。
本日は舞楽の中でも華やかな舞楽蘭陵王をご覧いただきます。 舞楽にも三つの分類があります。

  1. 神楽(かぐら)などが起源の日本の国産雅楽「国風歌舞(くにぶりうたまい)」
  2. 外国から日本に渡来した舞楽。
    これにも二系統あって、中国から伝わって来た赤い衣装系「唐楽(とうがく:左舞)」、朝鮮半島から伝わって来た緑の衣装系「高麗楽(こまがく:右舞)」。他にもインドやベトナムから伝わったものなど。
  3. 日本の貴族の間ではじまった朗詠[ろうえい]、催馬楽[さいばら]などの「歌物(うたもの)」

の三分類です。
本日の蘭陵王は、古い時代に中国から伝わって来て日本で完成された舞楽の一つで、「唐楽(とうがく)」の左舞です。

本日の楽器

まず吹奏楽器(吹きもの)三管の紹介です。

笙(しょう)

パイプオルガンの原型ともいえる複管のリード楽器です。吹奏楽器でありながら和音が出せるのが大きな特徴です。吹いても吸っても同じ音がでるのはハーモニカと同じです。演奏時は伴奏楽器としての役割を担います。

笙(しょう)
笙(しょう)
笙(しょう)解説
【音の出し方】
竹の根元に小さな指穴(お椀の少し上)が開いています。それを指で押さえて、吹き口から息を入れます。また、吹き口から息を吸っても、吹いたときと同じ音が出ます。演奏中、鳳笙はこれを四拍ずつ繰り返して演奏します。竹の内側に扇上(びょうじょう)と呼ばれる音穴が開いており、ここからの竹の長さと、リードの大きさで音程をきめています。

篳篥(ひちりき)

オーボエ、ファゴットなどの原型ともいえるリード楽器です。葦を鏝(こて)でつぶした独特のリードを使用します。演奏時には主旋律を担当します。音程がとても不安定であるため高い演奏技術が必要です。

篳篥(ひちりき)
篳篥(ひちりき)
篳篥(ひちりき)解説
【音の出し方】
篳篥には9つの指穴が開いています。したがって演奏のときに使用しない指は1本だけ、左手の小指だけ使いません。他の指はそれぞれの指穴を担当します。管の持ち方はリコーダーと同じように構え、リードは、責(せめ)止(竹製のストッパー)の少し手前くらいを唇に力を入れないようにしてくわえます。あとは風船を膨らます要領で静かに息を入れてみましょう。

龍笛(りゅうてき)

フルートの原型で、運指がほとんど同じです。雅楽の曲は、まず龍笛のソロ演奏から始まります。主に広い音域を生かして主旋律にからむ副旋律を担いますが、主旋律を受け持つこともあります。

龍笛(りゅうてき)
龍笛(りゅうてき)
龍笛(りゅうてき)解説
【音の出し方】
一般的な横笛と似た形状をしていますが、吹き口と指穴が比較的大きいのが特徴です。左3本右4本で指穴を押さえ、残りの親指と小指で管のバランスをとります。指の第二関節あたりで穴を押さえ、吹き口も唇で半分くらいふさいで息を入れます。その際、息を全部管に入れようとすると音がなりません。半分は管にもう半分は管の外に出すようにして息を入れます。

次に打楽器 (打ちもの)三鼓を紹介します。

鞨鼓(かっこ)

両面鼓の楽器で、牛革が張ってあり、2本の木の桴(ばち)で演奏します。演奏時には統率楽器として演奏全体のテンポを管理する役割をもちます。

鞨鼓(かっこ)
鞨鼓(かっこ)

楽太鼓(がくだいこ)

釣太鼓とも呼ばれ、バスドラムと同じ様に低く響く音でリズムをつくり、演奏全体を下から支えます。鼓面は直径50cmを超える大きさです。

楽太鼓(がくだいこ)
楽太鼓(がくだいこ)

鉦鼓(しょうこ)

雅楽では唯一の金属製楽器です。青銅製の皿を桴で擦るように叩きますので、硬い音が出ます。

鉦鼓(しょうこ)
鉦鼓(しょうこ)